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ゆえ、順境にあってこそ逆境のことを常に意識する必要がある。
日本にも中国にも“3代目”にまつわることわざがいくつかあるが、いずれも3代目の器量がその後を決めるというような内容である。初代が打ちたてた業績を2代目が継承し、その反省と評価に立って3代目が事業を受け継ぐわけだが、その器量の善し悪しによって、その後長く続くか、短期間で終わるかが分かれるのである。始皇帝が始めた秦王朝は3代で終わった。源頼朝の鎌倉幕府も3代で北条氏に取って代わられた。徳川家康の江戸幕府は15代まで260年間続いた。青年の家は草創期の熱い思い(初代)が発展・拡張期に受け継がれ(2代目)、変革・展望期(3代目)の今、21世紀を目指していこうとしている。今こそ長く続くか、このまま衰退していくのかの分岐点であるので、施設として、組織としての健康診断をしっかりとおこなって欲しいと思う。
そして、その健康診断がどのように生かされているかということも大切である。どのような組織でも変化は日常的におこり、機構改革は常に考えられ、そのいくつかは実行されている。しかし、ここで注意してほしいことは、情報が末端まで届いているか…ということである。斬新な改革は実に結構なことである。しかし、それが末端まで届いていなければ、いたずらに混乱を招くだけで終わってしまう。良い改革は組織の隅々にまで浸透してこそ、真の改革たりえるということを忘れないでほしい。

 

第4条 魅力ある事業の展開
従来の青年の家の悪しきイメージが形成されてきた原因の一つには、団体宿泊訓練の施設として位置付けられ、歴史の流れの中で発展してきたという経緯に根差した問題点がある。「訓練」という部分が独り歩きし、研修生管理の視点で作られた規則が教育目標となり、規則の順守が強制されたという部分である。それゆえ、マニュアル至上主義や画一的生活時間などの弊害が生まれた。しかし、考えてみて欲しい。学校利用の場合にはいざ知らず、勤労青年の中には仕事が終わって職場から青年の家に直行するというケースがあるわけである。18時、あるいは19時でなければ入所できないということもざらであろう。それが、必ず17時までに入所しなければならないという、画一的生活時間のゆえに利用できないとなれば、本来、青年の家を利用するために想定された層の利用を阻害する結果となってしまう。また、研修の内容の如何にかかわらず、ある時間帯になったら必ずつどいに全員参加することが義務づけられているのでは、本来何らかの効果を期待して青年の家を利用しようとしてやってきた団体に、プログラムの中断を強いることにもなり、これまた本末転倒のそしりを免れない。特に、昨今は個性的な団体や多様な利用の仕方が急速に増加している。青年の家の側としても、画一性を廃し、さまざまな利用形態に応じた対応のあり方を考えてみるべきではないだろうか。
また、青年の家の持っている機能に対しても利用団体によって要求が多様化しているのが今日の現状である。従前の“厳しい”イメージを求めてやって来る利用者は、青年の家が妙に物分かりが良くなったことに対し、戸惑いと反発を覚える向きもある。一方では開放・改革が進む青年の家を、その改革がゆえにペンションやホテルと混同し、サービスの不足ととらえる利用者もいる。しかし、青年の家のよって立つ精神は、一定の柔軟性を保ちつつも劇的に変化し

 

 

 

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